法改正と現在の信託
信託の多様化とニーズの高まりに合わせ、法改正が行われています。どのように変わったのか、大きな変化を見てみましょう。
信託業法の改正
金融商品の多様化とともに、信託の仕組みは、経済の活性化や「市場型間接金融」という新たな金融の流れを構築するを手助けとして、さまざまな場面で重要な役割を果たすことが期待されてきました。
もともと信託業の担い手は信託兼営金融機関のみでしたが、一般の事業会社にも、「信託のノウハウを利用し、担い手として多様な信託商品の提供を行いたい」「様々な信託機能を活用したい」というニーズが高まってきました。
そこで、2004年(平成16年)12月に「改正信託業法」が施行されました。この法改正によって、知的財産権等を含む財産権一般の受託が可能となるとともに、信託業の担い手が拡大され、金融機関以外の事業会社の参入などが可能になりました。
なお、信託サービスの利用者の窓口の拡大として、「信託契約代理店制度」と「信託受益権販売業者制度」も新たに作られました。
信託法の改正
信託制度は、特に第二次世界大戦以降、信託銀行による商事信託(貸付信託、年金信託など)を中心に発展を遂げてきました。
商事信託の分野では新たな投資・金融スキームとしてのニーズが高まり、その一方、民事信託の分野でも高齢社会の到来を背景に、後見的な財産管理や遺産承継を目的とする家族信託への期待が高まってきました。
しかし、もともと個人間の財産管理を念頭に置いて作られた「信託法」は、1922年(大正11年)の制定時以来、80年以上に渡って実質的な改正がありませんでした。
そのため、商事信託を中心に発展してきた現状に合わせて、2006年(平成18年)12月に「信託法改正」が行われ、2007年(平成19年)9月より施行されています。
信託法の改正で変わったポイントは、以下の通りです。
- 受託者の義務等の内容を適切な要件の下で合理化
(1)忠実義務に関する規定の合理化
(2)自己執行義務に関する規定の合理化
- 受益者の権利行使の実効性・機動性を高めるための規律の整備
(1)受益者が複数の信託における意思決定方法の合理化
(2)信託監督人・受益者代理人制度の創設
(3)帳簿等の作成、保存等に関する規律の整備
(4)受託者の行為の差止請求権の創設
- 多様な信託の利用形態に対応するための制度の整備
(1)信託の併合・分割の制度の創設
(2)新しい類型の信託(受益証券発行信託、限定責任信託、自己信託、目的信託、担保権の信託、遺言代用信託、受益者連続型の信託)に関する規定の整備・制度創設