証券代行業務
株式投資をしていると、株式会社から株主宛てに送付されてきた郵便物の差出人名に信託銀行の社名も併記されていることがあります。
これは、主に信託銀行が株式会社の株主名簿管理人となり、その会社の株式等にかかる様々な事務を証券代行業務として行っているからなのです。
概要
株主名簿の管理や株式に関する専門的なアドバイスを行う信託銀行
会社法では、株式会社(発行会社)は定款をもって株主名簿管理人を置く旨を定めることができ、株主名簿管理人を設置した場合には株主名簿を株主名簿管理人の営業所に備え置くことができます。
株主名簿管理人として信託銀行が当該株式会社に代わって株主名簿の管理を行いますので、株式会社は株式事務を任せるとともに、株式に関する専門的なアドバイスを受けることができます。
株式の売買等の情報は、株式等振替制度のもとで電子化されており、口座管理機関(証券会社等)、振替機関(証券保管振替機構)および株主名簿管理人の間で情報伝達が行われ、株主名簿は振替機関(証券保管振替機構)から株主名簿管理人に対して株主確定日ごとに通知される総株主通知によって作成されます。
株主総会に関する事務
株主名簿管理人である信託銀行は、株主名簿の管理のほかにも、株主総会の運営に関わる事務の一部を担っています。
具体的には、株主名簿管理人は、株主総会の開催にあたって事前に株主を確定し、株主総会の開催2週間前までに株主宛てに株主総会の招集通知を発送しています。(招集通知は電磁的方法(電子メール等)をもって株主総会参考書類および議決権行使書面の交付に代えることもできます。)
また、株主名簿管理人は、株主の議決権行使書の集計事務を行います。(議決権の行使についても、一定の要件のもとで電磁的方法による方法が認められています。)
このほか、株主名簿管理人は、株主総会において、株主の資格確認、集計作業などの補助を行うこともあります。
配当金の計算と支払い
株主名簿管理人は、一定の基準日における株主を確定したうえで、株主ごとの配当金を計算し、配当金の支払い、株主宛ての書類を作成・送付するなどの、配当金計算・支払い事務を行います。
単元未満株式の買取請求の取扱い
証券取引所で取引されている株式については、株式会社により売買される単位(100株など)が単元株式数として定められていますが、単元未満の株式を有する株主には、当該株式を発行した株式会社に対して買取請求をすることが認められています。
株主名簿管理人は、株式会社の単元未満株式の買取りに関して、株主からの買取請求の受付け、買取価格などの振替機関への連絡、買取代金の計算および支払いといった一連の事務手続きを行っています。
株主名簿の閲覧、謄写請求
株式会社(発行会社)の株主および債権者は、株式会社に対して株主名簿の閲覧・謄写を請求することができます。株式会社に対して株主名簿の閲覧・謄写の請求があったときは、株式会社の指示に従い、株主名簿管理人がその事務を行うこともあります。
募集株式の発行等
株式会社は、増資による新株の発行や株式分割を行う場合がありますが、このような場合にも、株主名簿管理人がこれらに関する一連の事務を行います。
また、株式の併合、株式会社の合併などの場合においても、株主名簿管理人は、株主名簿の更新、株主への通知などの事務を行います。
このほか、信託銀行は、未上場会社における株式事務なども行っています。
コンサルティング機能
株式を上場しようとする企業は、証券取引所の上場審査基準を満たされなければなりません。
信託銀行は、上場前の株式会社に対して、資本政策等のコンサルティングや、株式会社の定款・株式取扱規則などの株式実務に密接に関係する規定の整備等に関するアドバイスも重要な業務として行っています。
このような上場会社・未上場会社に対する株式実務のみならず、信託銀行は買収防衛策の導入支援などといった株式・新株予約権等の発行・管理に関するノウハウを活かしたコンサルテーション・情報提供なども行っています。
このような信託銀行の証券代行業務に対し、株式会社からは総合コンサルタントとしての期待がますます高まってきています。
仕組み
*現在、証券取引所に上場している株式会社の株式は電子化され、株式等振替制度のもとで振替機関(データセンター、証券保管振替機構)に記録されています。これにより、株式会社の株主や株式の譲渡等の情報は関係者の間で情報として連絡され記録されています。
株式等振替制度における株主名簿管理人(信託銀行)の役割等を図に表すと、次のとおりとなります。
主な関係者
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- 加入者
- 株主
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- 口座管理機関
- 証券会社等
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- 振替機関
- 証券保管振替機構
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- 発行会社
- 株式会社
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- 株主名簿管理人
- 信託銀行
よくあるご質問
発行会社からの委託を受けて、株主名簿の作成・管理などの株主名簿に関する事務を、株式会社に代わって行なう者です。
2009年(平成21年)1月に改正された「社債、株式等の振替に関する法律」により、上場会社の株式等に係る株券等はすべて廃止され、株式等振替制度が導入されました。制度導入前までは、株券等の実物をもって株主の管理が行われてきましたが、株式等振替制度の導入により、株式はすべて電子化され、関係者間の情報の伝達により振替機関(証券保管振替機構)に記録されることとなりました。
株式の売買等の情報については、電子化された株式を流通させている株式等振替制度のもとで、口座管理機関(証券会社等)、振替機関(証券保管振替機構)および株主名簿管理人の間で情報伝達が行われ、株主名簿については振替機関(証券保管振替機構)から株主名簿管理人に対して株主確定日ごとに通知される総株主通知によって作成されます。
口座管理機関(証券会社等)から提供される加入者情報(株主情報)を氏名・住所などにより振替機関(証券保管振替機構)で名寄せされますが、総株主通知は、この名寄せに従って株主確定日ごとに口座管理機関(証券会社等)から報告される所有株数を集約した情報となっています。
証券取引所で取引されている株式は、株式会社により売買される単位として単元株式数が定められています。100株など一定株数を1単元とし、1単元の株式について議決権行使等が認められ、1単元未満の株式については、議決権行使等が認められていません。1単元の株数は、原則、発行会社が定款により自由に定めることができます。