株式交付信託
自分が勤めている会社の株式を取得することを通じて、従業員の福利厚生の充実や財産形成を促すものとして、株式交付信託があります。
従業員や役員が自社株の株価上昇による経済的な利益を享受するため、従業員や役員は自社株の株価を意識するようになり、「より仕事を頑張ろう」と勤労意欲を高める効果も期待できます。
概要
自社株を用いて働く人の勤労意欲を高めます
従業員や役員に自社株を付与する制度
従業員や役員の財産形成や役員へのインセンティブ付与を促進する制度として、自社の株式を付与する制度が広く普及しており、係る制度に信託を活用したものが株式交付信託です。
福利厚生の充実、経営参加意識などの醸成を図るための従業員向け株式交付信託
従業員向け株式交付信託(ESOP(Employee Stock Ownership Plan)信託とも呼ばれます)とは、従業員が自社株を取得し、その株価上昇による経済的な利益を享受することができる信託です。
なお、従業員向け株式交付信託には、1. 社内規程に基づき信託を通じて導入企業の自社株を従業員に対して給付する「株式給付型」と、2. 自社株の購入を目的とした「従業員持株会」を設立し、そこから自社株を取得する「従業員持株型」の2種類があります。
役員向け株式交付信託
役員向け株式交付信託とは、役員に対して、業績目標の達成度などに応じて、在職時または退職時に自社株を交付する信託で、役員に株式が交付されます。
仕組み
*ここでは、多くの企業で利用されている従業員向け株式交付信託のうち「株式給付型」の仕組みについてご紹介します。
主な関係者
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- 委託者
- 導入企業
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- 受益者
- 導入企業の従業員
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- 受託者
- 信託銀行等
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- 信託管理人
信託管理人は、従業員に代わって信託銀行等に対して、議決権行使の指図を行い、一般的には従業員の中から選任されます。
なお、役員向け株式交付信託の場合は、役員が受益者となるほか、信託管理人は、議決権不行使の指図を行う等の違いがあります。
1導入企業[委託者]は、一定の業績ポイント(※)を有する従業員[受益者]に対して、信託を通じて自社株式を給付することを定めた社内規程を制定します。
2導入企業[委託者]は信託銀行等[受託者]との間で信託契約を締結し、金銭を信託します。
3信託銀行等[受託者]は、信託した金銭を原資として、株式市場から導入企業[委託者]の株式を取得します。
4信託管理人(多くの場合、従業員の中から選任)が株式の議決権行使の指図を行います。
5従業員[受益者]は、業績への貢献度等に応じて業績ポイントを受け、所定の時期までに、自社株の交付を受ける意思表示を行い、業績ポイントに応じた信託受益権を取得します。
6信託銀行等[受託者]は、従業員[受益者]に対し自社株を交付します。
7信託が終了するまで、一定期間ごとに上記3. から6. までを繰り返します。
よくあるご質問
株式交付信託では、企業が委託者となるので、これらの信託を導入している企業の従業員および役員のみが利用することができ、ご自身が勤めている企業が株式交付信託を導入していない場合には、利用することができません。
基本的な仕組みは経産省のスキームを前提としておりますので、詳細は経産省HPをご覧ください。
株式交付信託の基本的な税務上の取扱いは、次のとおり(別紙1)です。
なお、別紙1については、経済産業省の「新たな自社株式保有スキームに関する報告書」の内容を前提としておりますが、契約内容によって取扱いが異なる可能性がありますので、詳細についてはお取扱い金融機関等にお問合わせください。
役員向け株式交付信託から交付された株式等については、一定の条件を満たした場合、税務上、事前確定届出給与または業績連動給与として取り扱われ、企業において損金算入することができます。
信託を用いた株式報酬制度(役員向け株式交付信託)の税務上の取扱いについて、国税庁等と協議し、次のとおり(別紙2)、とりまとめましたのでご参照ください。
なお、契約内容によって取扱いが異なる可能性がありますので、詳細についてはお取扱い金融機関等にお問合わせください。
役員向け株式交付信託に関する税務上の取扱い(別紙2) [151 KB]
経済産業省HP:『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプランの導入の手引-』を改訂しました(2021年6月7日改訂)