第100回信託大会(三菱UFJ信託銀行 窪田社長)
2025年04月09日
当協会は、令和7年4月9日(水)に、経団連会館において、オンライン配信を併用して第100回信託大会を開催いたしました。
はじめに窪田 博信託協会会長(三菱UFJ信託銀行社長)から、信託機能の発揮による社会・経済への貢献および信託に対する信頼の確保について所信を述べた後、加藤勝信金融担当大臣、植田和男日本銀行総裁からそれぞれご挨拶をいただきました。
また、沖野東京大学大学院法学政治学研究科教授から「家族信託をめぐって」と題するご講演をいただきました。
所信
信託協会は、「信託制度の発達を図り、公共の利益を増進すること」を目的として、大正15 年に創立、令和8年1月に設立100 周年を迎える。
改めてわが国信託の歩みを振り返ると、大正11 年に信託法・信託業法が制定され、戦後の復興と高度経済成長を資金面で支えた貸付信託をはじめ、投資信託、企業年金、資産流動化等、社会・経済課題に応じて様々な商品やサービスが誕生し、普及してきた。
その後平成16 年の信託業法、平成18 年の信託法改正や税制改正等を経て、遺言代用信託や受益証券発行信託、教育資金贈与信託等の新しい信託商品が生まれ、活用されてきた。
このように、信託は社会からのニーズに合わせて多彩な機能を提供することで、社会・経済を支える重要なインフラとして発展を続け、直近、令和6年9月末時点で信託財産総額は約1,700 兆円を超える水準にまで大きく拡大した。
信託は時代の変遷と共に発展を続け、今まさに次の時代に向けて新たな一歩を進めようとしている。
信託機能の発揮による社会・経済への貢献
(1)資産運用立国・投資立国の推進
足元では「貯蓄から投資へ」の移行が大きく進んでいる。
昨年1月からスタートした新NISA 制度をはじめとした「資産運用立国」の取組みにより、家計の金融資産は令和6年9月末時点で2,000 兆円を超える水準に達する等、新たな投資資金の流れが形成され始めている。
今後「成長と分配の好循環」の動きをさらに大きなものとしていくためにも、信託の資産管理、運用等の機能やノウハウを活用し、昨年4月に設立された金融経済教育推進機構とも連携したうえで、インベストメント・チェーンを構成する各主体への取組みを強化し、「資産運用立国・投資立国」の実現に貢献してまいりたい。
(2)社会的課題解決に向けた取組み
コロナ禍を経て社会が急速に変化する中で、様々な社会的課題が生じている。
例えば、家計においては、わが国の高齢化率が過去最高を更新し続ける中、次世代に向けた資産承継に対する悩み・不安が高まっていると感じている。
ニーズに応えるサービスの充実・普及を通じ、社会的課題の解決に努めてまいりたい。
企業においては、持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティ課題に関する取組みが進んでいる。
機関投資家としての立場、そして企業のガバナンス対応を支援する立場から、サステナビリティの取組み促進に資する提言等にも取り組んでまいりたい。
また、令和6年5月14 日には公益信託に関する法律が成立し、令和8年4月1日に施行される予定である。
公益信託の主たる担い手である信託業界として、実務視点を生かした対外発信・周知等に取り組み、新たな法制のもとで民間の公益活動が一層活性化するよう注力してまいりたい。
(3)次世代を見据えたデジタル活用、信託活用の高度化
テクノロジーの進化が進む中で、金融分野においてもデジタル活用が進み、新たな金融サービスの提供が進んでいる。
デジタル技術の活用による高度化・効率化やブロックチェーン技術を活用した金融サービスの活用拡大に積極的に挑戦してまいりたい。
また、協会100 周年を機に、次世代に向けた信託の活用についても検討してまいりたい。
信託に対する信頼の確保
信託協会には、平成16 年の信託業法改正を機に信託各社の加盟が進み、現在、加盟会社は計90社と拡大している。
信託の担い手が広がる中で広く信託商品・サービスの提供が進んできたが、信託の担い手である受託者が改めて強く意識しなければならないのが、「受託者責任」、すなわち「フィデューシャリー・デューティー」の重要性である。
受託者は、委託者の所有する財産権を移転し、管理・運用を行うフィデューシャリーとして、通常の契約当事者には無い義務と責任が課されている。
こうした制度の背景には、「受託者が、信託財産に込められた委託者の意思を尊重し、受益者のためにこれを遂行していく」という基本理念がある。
フィデューシャリーの本家本元である信託業界として、過去から受け継がれてきた理念を未来へと伝え、さらに高めていくという責任感を胸に、信頼の礎となるお客さま本位の姿勢を徹底し、受託者責任を全うしてまいりたい。
ご講演
「家族信託をめぐって」
東京大学大学院法学政治学研究科 沖野 眞已教授
以上