第98回信託大会(みずほ信託銀行 梅田社長)
2023年04月12日
当協会は、令和5年4月12日(水)に、経団連会館において、オンライン配信を併用して第98回信託大会を開催いたしました。
はじめに梅田圭信託協会会長(みずほ信託銀行社長)から、信託機能の発揮による社会課題解決と経済成長の同時実現への貢献、信託の次の100年に向けた信頼の向上について所信を述べた後、藤丸敏金融担当副大臣、内田眞一日本銀行副総裁からそれぞれご挨拶をいただきました。
また、柳川東京大学大学院経済学研究科教授から「これからの経済と信託」と題するご講演をいただきました。
所信
昨年は信託法・信託業法制定から100年の節目の年であった。両法の制定以降、信託制度は我が国の社会経済の重要なインフラとして発展を続け、信託財産は令和5年1月時点で約1,500兆円まで拡大しており、コロナ禍と重なった直近3年を見ても約258兆円もの伸びを示している。
足もとでは、社会経済情勢の大きな変化・混乱を受け、幅広い世代において、将来に向けた不安の高まりに伴い、安心・安全のニーズが大きくなっており、信託への期待は高まっている。
信託機能の発揮による社会課題解決と経済成長の同時実現への貢献
信託が持つ安全かつ柔軟な機能により、様々な社会課題を解決し、国民一人ひとりの幸福を追求するとともに、新たな経済成長を創出し、持続的な世界の実現に貢献して参りたい。
(1)貯蓄から投資の加速による経済成長と資産所得の好循環への取り組み
信託は、財産を安全に保管・管理し、忠実・公正に業務を遂行することで、安心して投資・運用できる社会に貢献している。投資信託を含む資産管理型信託の受託残高は令和4年9月時点で約1,192兆円まで拡大しており、今後も財産管理機能を発揮していくとともに、金融経済教育へ取り組んでいくことで、貯蓄から投資の流れを後押しして参りたい。
スタートアップ等への円滑な資金供給を促すための新しい信託制度の創設に向けた提言など、これまで培ってきた経験を活かして、経済成長と個人の資産形成の実現に貢献して参りたい。
(2)高齢化および少子化への取り組み
人生100年時代における安心を提供するための資産管理・資産承継の商品・サービスの提供に引き続き取り組み、事業承継に係る、コンサルティングや信託商品の提供など、お客さまの円滑な事業の引継ぎも積極的に支援し、経済成長につなげて参りたい。
先送りの許されない少子化への対応として、世代間の資産移転を促進し、結婚・出産・子育てを支援する信託や教育・人材育成を支援する信託の、より一層の普及に尽力することで、包摂的な経済社会の発展に貢献して参りたい。
(3)ESG・サステナビリティへの取り組み
企業のESGへの取り組みが進み、ESGの観点を投資判断に組み込んだESG投資が世界的に拡大している。非財務価値の向上を重視したサステナビリティ経営の取り組みにおいて、人的資本への投資は非常に重要な要素である。信託業界においても、機関投資家としての投資先企業とのエンゲージメント、年金や株式報酬関連などの信託商品・サービスの提供、ガバナンス等に係るコンサルティング、確定拠出年金受託企業への投資教育推進などで、企業の積極的な取り組みを促していくとともに、非財務情報開示の充実に向けた支援なども行って参りたい。
フィランソロフィーの促進に向けて、公益信託の公益認定制度一元化が検討されており、民間の資金と信託の機能を活用した公益活動の活性化についても貢献して参りたい。
信託の次の100年に向けた信頼の向上
信託の次の100年に向けて、信託の信頼の向上に努めて参りたい。
今後、デジタルアセット市場の拡大やweb3の環境整備による分散型自律組織(DAO)の活用など新たなテクノロジーの進化による社会構造の変化が想定される。
こうした変化を先取りした上で、高い専門性と豊かな発想を持ち、信託の特性である柔軟性などを活かして、様々なステークホルダーの想いをつなぎ、安心・安全で持続的な未来を紡ぐという信託業界の取り組みはこれまでと変わるものではない。
信託が日々の生活の身近な場所で活用され、社会の発展に貢献していることをあらゆる世代に認識してもらうために、信託について、より積極的に情報発信していくことも必要である。
こうした取り組みにより、信託の次の100年に向けて、信託に対する信頼向上に努めて参りたい。
ご講演
「これからの経済と信託」
東京大学大学院経済学研究科 柳川 範之教授
以上