第97回信託大会(三菱UFJ信託銀行 長島社長)
2022年04月13日
当協会は、令和4年4月13日(水)に、経団連会館において、オンライン配信を併用して第97回信託大会を開催いたしました。
はじめに長島巌信託協会会長(三菱UFJ信託銀行社長)から、信託機能の一層の活用による社会・経済課題の解決、持続可能な社会の実現、受託者責任の重みと信託に対する信頼の更なる向上について所信を述べた後、鈴木俊一金融担当大臣、黒田東彦日本銀行総裁からそれぞれご挨拶をいただきました。
また、加毛東京大学大学院法学政治学研究科教授から「信託法・信託業法の百年――私法学の観点から――」と題するご講演をいただきました。
所信
大正11年の信託法制定から本年で100年を迎える。
この間、私どもは戦後の復興と高度経済成長を資金面で支えた貸付信託をはじめとして、企業年金、資産流動化等、様々な社会・経済課題の解決に向けて信託機能を活用した商品・サービスを提供してきた。
最近では、平成18年の信託法の抜本的な見直しにより整備された、遺言代用信託、受益証券発行信託といった信託制度を活用して、少子高齢化の進展等、現下の社会課題解決に向けて、次世代に対する円滑な資産承継に資する商品や、国民の資産形成に資する運用商品の提供等を進めている。
信託機能の一層の活用による社会・経済課題の解決、持続可能な社会の実現
私どもは今後も、信託機能を一層活用して社会・経済課題の解決に貢献してまいりたい。
足もとでは、コロナ後の社会を見据えた様々な取組みが進展している。金融分野におけるデジタル化はその一例であり、デジタル証券やステーブルコインの法制化等、新たな金融サービスの提供や決済インフラの高度化が進んでいる。私どもは信託の機能を活用することで、金融分野のデジタル・イノベーションの推進に貢献してまいりたい。
また、持続可能な社会の実現に向けて、ESG課題解決に向けた取組みが進展している。私どもは責任ある機関投資家としての立場のみならず、企業のガバナンスに関する課題解決を支援する立場から、ESGやサステナビリティに関する取組みの促進に資する制度の提言等を行ってまいりたい。
そして、少子・高齢社会においては、家計の資産形成、管理、次世代への承継の重要性は論をまたない。信託を活用することで、信託設定当時のお客様のご意志に沿って世代を超えて財産を管理することが可能である。このように信託の長期間にわたる財産管理機能を発揮すること等を通じて、すべての世代が安心して生活できる社会の実現に貢献してまいりたい。
受託者責任の重みと信託に対する信頼の更なる向上
信託協会には、信託銀行のみならず、平成16年の信託業法改正を機に信託会社の加盟が進み、現在の加盟会社は合計82社にのぼり、信託の担い手が広がってきている。
担い手の広がりにより、広く信託商品・サービスの提供が進んできたが、私ども信託の担い手である受託者が改めて強く意識しなければならないのが、「受託者責任」の重みである。
信託は「信頼」を基礎に置いた制度であり、受託者はお客様の信頼に応えるために、フィデューシャリーとして高い倫理観と専門性に基づいて、常にお客様のために誠実に行動しなければならない。
社会・経済課題の解決に向けて受託者責任を確りと全うすることで、100年にわたる長い歴史の中で培われてきた信託に対する信頼の更なる向上に努めてまいりたい。
<記事掲載のご紹介>
第97回信託大会の模様について、金融庁の広報誌「アクセスFSA」5月号に記事が掲載されました。
記事は、下記のリンク先からご覧いただけます。
金融庁広報誌「アクセスFSA(2022年5月号)」(金融庁HP)1~2ページ
ご講演
「信託法・信託業法の百年――私法学の観点から――」
東京大学大学院法学政治学研究科 加毛 明教授
加毛教授ご講演「信託法・信託業法の百年――私法学の観点から――」 [867 KB]
以上