会長就任記者会見(三菱UFJ信託銀行 窪田社長)
2025年04月02日
冒頭、川嶋専務理事より、本日開催された理事会において、信託協会の新会長に三菱UFJ信託銀行の窪田博取締役社長が互選により就任したこと、また、新副会長にみずほ信託銀行の笹田賢一取締役社長が、新一般委員長に三菱UFJ信託銀行の木本取締役常務執行役員がそれぞれ就任した旨の紹介を行った。
また、第100回信託大会について、4月9日(水)午後3時から経団連会館にて開催するので、記者クラブの方々にも是非ご来場またはオンラインにてご参加いただきたい旨の案内および令和7年度の信託研究奨励金について、贈呈総額を1,000万円から1,500万円に増額し、贈呈額も個人は上限100万円、共同研究グループは上限110万円とそれぞれ拡充して募集を開始した旨の説明を行った。
会長就任の抱負
このたび、信託協会会長に就任いたしました窪田でございます。どうぞよろしくお願い致します。会長就任にあたり、2点抱負を申し上げます。
1つ目は、信託の機能を一層発揮することで社会・経済に貢献して参りたい、という点であります。具体的に3点申し上げます。
まず1点目は、「資産運用立国・投資立国の推進」です。
足元では「貯蓄から投資へ」の移行が大きく進んでおり、昨年1月からスタートした新NISA制度をはじめとした「資産運用立国」の取組みから、家計の金融資産は 2,000兆円を超える水準に達する等、新たな投資資金の流れが形成され始めています。今後「成長と分配の好循環」の動きを更に大きなものとしていくためにも、信託の資産管理、運用等の機能やノウハウを活用して、また昨年4月に設立されました金融経済教育推進機構とも連携したうえで、インベストメント・チェーンを構成する各主体への取組みを強化して、「資産運用立国」・「投資立国」の実現に貢献して参ります。
2点目は「社会的課題解決に向けた取組み」であります。
コロナ禍を経て社会が急速に変化する中、様々な社会的課題が生じており、例えば、家計においては、わが国の高齢化率が過去最高を更新し続ける中、次世代に向けた資産承継に対するお客さまの悩み・不安が高まっていると感じております。お客さまのニーズにお応えするサービスの充実・普及を通じ、社会的課題の解決に努めて参る所存であります。
また企業においては、持続可能な社会の実現に向けて、サステナビリティ課題に関する取組みが進んでおります。私どもは機関投資家としての立場、そして企業のガバナンス対応をご支援する立場から、サステナビリティの取組み促進に資する提言等にも取り組んで参ります。
加えて昨年5月には公益信託に関する法律が成立し、来年4月に施行される予定です。公益信託の主たる担い手である信託業界として、実務視点を生かした対外発信・周知等に取り組み、新たな法制のもとで民間の公益活動が一層活性化するよう注力して参る所存でございます。
3点目です。「次世代を見据えたデジタル活用、信託活用の高度化」であります。
テクノロジーの進化が進む中で、金融分野においてもデジタル活用が進み、新たな金融サービスの提供が進んでおります。デジタル技術の活用による高度化・効率化やブロックチェーンの技術を活用した金融サービスの活用拡大に積極的に挑戦し、また、協会100周年を機に、次世代に向けた信託の活用についても検討して参ります。
続いて抱負の2つ目でありますけれども、信託に対する信頼の確保に注力して参りたいということであります。
信託協会には、平成16年の信託業法改正を機に信託各社の加盟が進み、現在、加盟会社は計90社と拡大しております。
信託の担い手が広がる中で、広く信託商品・サービスの提供が進んで参りましたが、私ども信託の担い手である受託者が改めて強く意識しなければならないのが、「受託者責任」、すなわち「フィデューシャリー・デューティー」の重要性であります。
受託者は、委託者の所有する財産権を移転して、管理・運用を行うフィデューシャリーとして、通常の契約当事者には無い義務と責任が課されています。
こうした制度の背景には、「受託者が、信託財産に込められた委託者の意思を尊重し、受益者の為にこれを遂行していく」という基本理念があると考えております。
フィデューシャリーの本家本元である信託業界として、過去から受け継がれてきた理念を未来へ繋げ、さらに高めていくという責任感を胸に、信頼の礎となるお客さま本位の姿勢を徹底し、受託者責任を全うして参りたいと考えております。
以下、質疑応答
今年度取り組みたい事項について
- 問:
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資産運用立国、デジタル活用等、今後取り組みたい内容について話があったが、改めて今年度会長として力を入れていきたいと考える分野について伺いたい。
- 答:
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先程お話ししました通り、まず、資産運用立国・投資立国の推進について言いますと、インベストメント・チェーンを推進する各主体に、我々信託銀行は非常に関係が深いので、この辺りの積極的な取組み、また、金融経済教育推進機構との連携をしっかり進めて、国民の皆さまのリテラシーを高めていくことに大きく貢献したいと考えています。
また、次世代に向けた資産承継に対する課題への取組みとしましては、来年3月末に期限を迎える教育資金贈与信託に係る税制優遇措置の延長に向けた税制要望を活動して参る所存でございます。
また、公益信託について、先ほどお話ししましたけれども、来年4月に(公益信託に関する法律が)施行される予定であります。公益信託の委託する財産の種類も拡大しますし、受託する側の主体も拡大していくので、その観点から、実務視点を生かした対外発信・周知等に取り組んで、新たな法制のもとで民間の公益活動が一層活性化するよう注力して参りたいと思っております。
また、デジタル分野についても、先程お話ししましたが、ステーブルコインやデジタル証券、我々の信託領域を使った新たな金融サービスに係る部分について、色々貢献できることがたくさんあると思っておりますので、これの活用拡大にも積極的に挑戦していきたいと思っています。
信託協会が創立100周年を迎えることについて
- 問:
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2026年1月に信託協会が100周年を迎えるが、その受止めと、100周年にあたって何か特別な活動を予定しているか。
- 答:
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私どもは来年1月に設立100 周年を迎えます。これまで、社会課題の解決に向けて、信託業界は多様な商品・サービスを提供してきましたが、この100年という節目の年を迎えることができたのは、この場にいらっしゃる皆さまをはじめ、多くの方々からあたたかいご支援をいただいたおかげだと思っており、改めて感謝申し上げたいと思います。
我々の周年事業としましても、 既存の事業活動に加え、こうした感謝の気持ちをお伝えするとともに、信託業界が歩んできた100年の歴史を振り返り、未来へのビジョンを共有して発信していけるようなシンポジウムの開催等を検討し、実行していきたいと考えております。
インベトメント・チェーンにおける信託銀行の役割について
- 問:
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インベストメント・チェーンの主体の一つとして貢献していくとのことであったが、インベストメント・チェーンに参画する多様な金融機関の中で信託銀行がどのような役割を果たせる業種だとお考えか。特徴などがあれば伺いたい。
- 答:
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インベストメント・チェーンの中で非常に大きな役割があると認識しております。アセットマネジメントの部分、実際に我々が運用の主体として行っているところですが、当然これは国民の皆さまの資産をしっかり運用するべく、良い商品、サービスを提供していくことが重要なので、この部分をしっかりと行っていくことがまず最初にあります。
また、アセットオーナープリンシプルに則って、年金基金を含めた運用をしっかりサポートすることも、アセットマネジメントに関連して取り組んでいきます。
それから、資産管理の領域では、まさにアセットマネジメントの運用主体が運用に専念できるように、ミドル、バックの事務を含めたビジネスのアウトソースによって、運用者が運用の成果を上げていくようにすることが、国民の皆さまへの還元にもなると考えています。
アメリカの関税政策の信託への影響について
- 問:
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アメリカのトランプ大統領が関税の引上げ実施について近く正式に公表するとのことで、まだ3月末の信託財産残高の統計が公表されていないが、信託事業への影響についてお考えを伺いたい。
- 答:
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株式マーケットを中心に非常にボラタイルな動向でありますが、信託業界では株式マーケットのインパクトが大きいと思いますので、マーケットがどのようになっていくかということを注視しなくてはならないと思っています。ここは、先が読めない部分ではありますが、元々アメリカは消費が堅調であり、ある程度インフレも落ち着いてきたところで、利下げが行われる可能性があり、また、利下げ可能な余力が非常に大きいので、何かあれば金融政策でも対応可能ではないかと考えています。よってマーケットは大きく崩れることはないのではないかと思っていますが、ただ、関税の動向は、わが国だけではなく、グローバルでインパクトがあるので、非常に注視していかなくてはならないと考えています。
M&A仲介のトラブルについて
- 問:
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各地でM&Aが盛んになる一方、M&A仲介のトラブルも社会問題化していると思う。信託業界も事業承継等でM&Aを有効な手段の一つと捉えていると思うが、トラブルの増加に関する所感、問題意識があれば伺いたい。
- 答:
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いろいろと報道ベースで見聞きしておりますけれども、本当にこういうトラブルというのはあってはならないものだと思っており、我々が直接仲介に入る部分というのはそれほど大きくないと思っておりますが、冒頭に申し上げました通り、常にフィデューシャリーとして、通常の受託者責任だけでなく、忠実義務を含めてしっかり責任を果たしていきたいと思っております。信託業界は、お客様本位の業務運営に従って、フィデューシャリー・デューティーにつきましても我々が本家本元と思っているところもありますので、そのようなことがないように、信託協会としても周知徹底してまいりたいと思っています。
実質株主の把握に係る会社法改正について
- 問:
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法制審議会において、企業が実質株主を把握することができるようにするため、会社法の改正の検討が進んでいることについて、協会長として、業界としてこの動きをどのように見ているか。また、どういったところに注意すればよいかという課題について、何かあれば教えていただきたい。
- 答:
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具体的な内容はこれから検討されると認識しております。我々信託銀行は株主名簿管理業務を行っており、投資家と発行体をつなぐ役割を担っている為、非常に重要な位置付けにあります。現在でも実質株主判明調査などで実質株主が誰であるかを判明し、実質株主に対し効果的なSRのエンゲージメントを行って、取締役選任議案の賛成率を上げる活動などをサポートしています。
そういった意味では、実質株主の把握について、我々はある程度大きく関わっていかなければならないと考えています。2番目の質問にも関連しますが、実質株主の状況を発行体に渡すスキームができたとしても、それをまとめるインフラがなければ発行体が困る為、我々信託業界だけではなく、関係省庁、団体を含めてインフラを作っていくことが非常に重要ではないかと考えており、信託協会としても協力して参ります。
最近の金利動向について
- 問:
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日銀の政策金利引上げが信託ビジネスに与える影響と見通しについて伺いたい。
- 答:
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信託銀行の中でも銀行業務、預貸業務のところについて言いますと、ある程度金利のある世界になって正常化していくということは、信託業界としてもポジティブな影響があると認識しております。一方で、当然、日銀は、今の賃上げ動向がどう進むか、物価上昇がどう進むかということで、いわゆるコストプッシュ型ではなくて、デマンドプル型で、本当に賃上げが進んで、物価が上がっていくという好循環になり、利上げが進んでいけば非常に喜ばしいことだと思っていますし、そのようになっていくと期待しております。
信託業界はあらゆる社会のインフラを担っている業界でありますので、金融が正常化していくということは世の中全体としても、信託業界としても、非常に喜ばしいことだと思っています。ただ、当然ですが、利上げにより、企業の利払いが増えたり、住宅ローンの利払いが増える為、企業や個人の動向には十分に留意していかなければいけないと思っています。
以上