会長就任記者会見(三井住友トラスト・ホールディングス 高倉社長)

2021年04月08日

 冒頭、振角専務理事より、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から会場を変更して開催したことを説明したうえで、本日開催された理事会において、信託協会の新会長に三井住友トラスト・ホールディングスの高倉執行役社長が互選により就任したこと、また、新副会長に三菱UFJ信託銀行の長島取締役社長が、新一般委員長に三井住友トラスト・ホールディングスの中野執行役常務兼執行役員がそれぞれ就任した旨の紹介を行った。
 また、第96回信託大会を4月14日(水)午後3時から経団連会館にて開催するので、記者クラブの方々にも是非ご来場またはオンラインにてご参加いただきたい旨の案内および令和3年度の信託研究奨励金の募集を開始したことについての説明を行った。

会長就任の抱負

このたび、信託協会会長に就任いたしました高倉でございます。1年間、よろしくお願いします。
就任にあたっての抱負を、大きく2つ述べさせていただきます。

抱負の1つ目は、「社会・経済の課題解決と持続可能な成長への貢献」で、具体的には3点ございます。
まず、1点目は「人生100年時代への対応」についてです。
人生100年時代の中、資産運用と財産管理機能を有する信託への期待は、益々高まってくると認識しております。
お客さまのニーズにお応えするサービスの充実・普及に努め、誰ひとり取り残されることなく金融サービスにアクセスし、その恩恵を受けられる「金融包摂」の実現に貢献してまいります。
次に、2点目は「ESG課題への取り組み」についてです。
経済の好循環実現のために策定されました「コーポレートガバナンス・コード」「スチュワードシップ・コード」は、企業や機関投資家に対し、社会・環境問題をはじめとするサステナビリティを巡る課題への取り組みを求めております。
信託業界としましては、社会的責任や公共的使命の重要性を認識し、「コーポレートガバナンス改革」と「スチュワードシップ活動」の両面から、持続可能な社会・経済の実現に貢献してまいります。
3点目は「『新たな日常』の構築への貢献」です。
新型コロナウイルス感染症拡大は、人々の価値観や行動様式、ビジネス環境に大きな変化を生じさせました。金融業界では非接触・非対面サービスなど、デジタル化が進展しております。また、テレワークなどの働き方改革は、地方移住への関心を高めるなど、地方創生に繋げることも期待されております。
信託業界としては、社会・経済の構造変化や課題に対し、お客さまの立場に立ったサービスや商品提供に努めることで、「新たな日常」の構築に貢献してまいります。

続きまして、抱負の2つ目は「受託者精神に立脚した『安心』の提供」です。
社会・経済環境は大きく変化していますが、高度な信頼関係を前提とする信託の基本精神は決して変わるものではありません。
信頼の礎となる、お客さま本位の姿勢と忠実義務をはじめとする受託者責任を全うし、信託業務を確実に遂行することにより、お客さまや社会への「安心」を提供してまいります。

以上、抱負を述べさせていただきました。

以下、質疑応答

人生100年時代

問:

「人生100年時代」を迎える中で、具体的にどのような利用者のニーズが高まっているとお考えか。そうしたニーズに対して、信託業界としてどのように対応していくのか。

答:

人生100年時代を迎える中、資産形成と財産管理に対するお客さまの関心や悩み・不安が高まってきております。特に、高齢化に伴いまして、認知症患者が増加している現状においては、認知判断能力低下時の資産形成・資産管理の重要性が大きくなると感じております。資産運用と財産管理の機能を有する信託業界として、お客さまの課題解決に資するサービスの充実・普及に努めたいと考えております。

ESG課題

問:

ESGやSDGsを巡る社会の意識が急激に高まっている中で、信託協会として具体的にどのように取り組んでいくのか。

答:

2050年のカーボンニュートラルの実現など、社会・環境問題をはじめとするESGへの取り組みが非常に重要になってきております。スチュワードシップ・コードやコーポレートガバナンス・コードでは、サステナビリティを巡る課題への取り組みが求められ、経済産業省なども、企業のESGへの取り組みを後押ししております。
一方で、ESG指標というようなものが様々ございますが、「評価の透明性」「恣意性の排除」「客観性の担保」など、各種課題があると認識しております。信託業界といたしましては、お客さまへガバナンスに関するソリューションをご提供する立場と、機関投資家としての立場とで、社会的責任や公共的使命の重要性を認識し、これらの諸課題の解決策を検討していきたいと考えております。

ESG投資に係る信託銀行の役割

問:

ESGに関して、昨年10月の政府のカーボンニュートラル宣言を受けてから、お客さまや投資先からの相談等の機会が増えているのか。また、それに対して、機関投資家としての信託銀行がどのようにエンゲージメントを強化していくのか。

答:

昨年、菅政権になりまして、カーボンニュートラルの方針が示され、年末には経済産業省からグリーン戦略が出されております。今年に入り、各企業様がカーボンニュートラルへの取り組みについて、様々な場面で様々な形でお話しされているということを私どもも認識しております。
協会長の立場で申し上げると、ESG投資につきましては、世界的な潮流を受け、受託運用機関、投資家として、各社が取り組んでいることは認識しております。信託協会としては今後の動向に注視しながら、各加盟会社の取り組みについて後押ししていきたいと考えております。
個社の立場で申し上げると、私どものグループでは、機関投資家として株式や債券の運用を実施しております。企業の業績や財務情報に加え、中長期的なビジネス機会やリスクなど、企業価値に影響を及ぼすESG情報を様々な場面で考慮するようになってきております。企業とのエンゲージメントや、議決権行使といったスチュワードシップ活動におきましても、ESGの課題を重要視しています。引き続き、責任ある機関投資家として、スチュワードシップ責任を適切に果たして、持続可能な社会・経済の実現に貢献していきたいと考えております。

地方銀行の信託協会への加盟増加

問:

地方銀行の信託協会への加盟が昨今、非常に増えていると思うが、そういった地方銀行への期待と、信託協会としてサポートできる点についてどのようにお考えか。

答:

現在、信託協会加盟会社は76社であり、そのうち、地方銀行が32行と認識しています。
新規参入自体は信託制度の普及・発展につながることであり、歓迎しております。当協会に加盟いただきまして、今後の信託制度をともに発展させていくということができればと考えております。
当協会では、加盟会社への各種情報提供とともに、信託契約代理店向けの研修も従前より実施しております。加盟会社やその信託契約代理店とともに、今後とも信託の普及・発展に力を注いでいきたいと考えております。

「新たな日常の構築」に対する信託銀行の取り組み

問:

「新たな日常の構築」について、お客さまの立場に立ったサービスや商品としてどのようなものが考えられるのかと、どうやって実際に貢献していけるのかというところをもう少し詳しく教えていただきたい。

答:

昨年からのコロナ禍で様々な形で日常が変わってきており、それに対応して加盟各社とも様々な取り組みをしております。まだまだ変わっていく途上ですので、色々なニーズに合わせて各社ともアイデアを出しながら進めていくことと認識しています。
信託業界としましては、社会経済の構造変化や課題に対してサービスや商品の提供に努めることで、新たな日常の構築に貢献していきたいと考えております。
政府の骨太の方針には、新たな日常が実現される地方創生を推進ということもあります。強靭かつ自立的な地域経済を構築することが必要ですので、業界として知恵を絞って、国、地方さらには官民で協力し、地方創生などの社会課題解決に貢献していきたいと考えております。

バーチャル総会、株主総会プロセスの電子化

問:

証券代行業務に関して、昨年、議決権行使書の不適切な処理の問題が生じたほか、足元では政府がバーチャル総会の完全オンライン化を進めていると思う。総会運営や議決権行使手続きの電子化、デジタル化についてのお考えを伺いたい。

答:

昨年来コロナの状況がありましたので、各企業において株主総会を実際に株主様に集まっていただいて開催するということだけでは株主様のニーズに応えられない場合もございました。そこで様々なアイデアを出しながら、現実的に実現可能な方法を技術的にもきっちりと確保するべく、加盟会社も色々な検討・工夫を重ねながら、取り組んでいると承知しております。
バーチャル総会の関係で協会として後押しする事項につきましては、今後も取り組んでいきたいと考えています。
議決権行使手続きの電子化については、株主様が議決権行使をするにあたっての議案検討期間の確保にもつながり、企業と投資家の対話促進にも資することになります。そのような観点から、この電子化の流れは非常に好ましいものと考えております。引続き信託銀行各社は関係者と協力しながら、議決権行使フローの電子化促進に向けて取り組んでまいります。
IT、デジタルの時代ですので、各社様々な技術的な研究・検討も進めていかれることと承知しております。業界全体で取り組んでいくことが適するテーマについては、信託協会としてもしっかりと対応していきたいと考えております。

以上