令和7年 信託協会長年頭ご挨拶

2025年01月06日

 昨年の日本経済は、物価を起点とした好循環が続き、3月には日本銀行がマイナス金利政策を解除し異次元緩和を終焉させるなど、長年続いたデフレからの脱却が本格的に視野に入ってきた年であったと思います。
 本年は、日本経済が更に力強さを増し、持続的な成長がより確かなものとなることを期待しつつ、平和で安心して過ごせる世の中になることを願っています。

 そうした中、信託財産残高は昨年9月末に1,746.2兆円と史上最高額となり、信託協会への加盟会社も約90社に拡大しました。これは、信託制度および信託機能が日本経済や国民生活における重要なインフラとして広く浸透し、その発展に寄与・貢献している証であると認識しています。

 さて、私は昨年4月の信託協会長就任にあたり、活動の柱として次の2つを掲げました。

 一つ目は「社会・経済課題の解決を通じた豊かな未来への貢献」です。少子高齢化が進展する中、「教育資金贈与信託」や「結婚・子育て支援信託」の更なる普及に努めるなど、「人生100年時代のWell-being」向上に資する取り組みを進めてまいりました。また、昨年成立した公益信託法については、よりよい制度となるよう来年の施行に向け政府と協議を実施するなど、「ESG・サステナビリティ課題」にも取り組んできました。

 二つ目は「受託者精神に立脚した安心の提供」です。プロダクトガバナンスの確立に向けた「顧客本位の業務運営に関する原則」(FD原則)の改訂を受け、信託協会としても、本原則等に係る好事例の共有や情報交換等の場として「顧客本位の業務運営に関するワーキンググループ」を立ち上げました。加盟会社の「プリンシプルベース」での顧客の利益を最優先にした業務運営を後押ししていきます。

 来年、信託協会は創立100周年を迎えます。足元、高齢社会や自然環境などの様々な環境の変化が起きており、将来を見据え「信託業界のありたい姿」について検討を進めています。今後より一層の深刻化が予想される気候変動の問題やAIをはじめとしたテクノロジーの進化などの社会の変化に対し、信託の力が十分に発揮できるよう「信託業界のありたい姿」を見定め、引き続き豊かな未来への貢献と安心の提供に努めてまいります。

一般社団法人信託協会 会長 高倉 透