信託法と信託業法と兼営法

信託に関係する法律には、主に次のようなものがあります。

信託法

  • 信託の定義や信託財産、受託者の義務、委託者や受益者の権利、一部の信託に関する特例など、信託に関する基本的なルールを定めた法律です。
  • 信託銀行や信託会社等は、受託者として忠実義務や善管注意義務、分別管理義務などのさまざまな義務を負っており、これにより委託者や受益者の保護が図られています。
  • 信託法上の義務は、信託銀行や信託会社等が行う商事信託だけでなく、個人の方が受託者となる民事上の信託も含め、すべての信託の受託者に適用されます。
  • 信託法は1922年(大正11年)に制定されましたが、その後、信託は信託銀行を中心に商事分野で多く利用されるようになり、信託に対するニーズも多様化するなかで柔軟に対応できないことも出てきました。
    現代の信託に対するニーズに応えるために、2006年(平成18年)に信託法が抜本的に改正され、受託者の義務の合理化や、受益者の権利行使の実効性・機動性を高めるための規定などが整備されました。

信託業法

  • 信託業を営む信託会社等の免許・登録業務、信託会社等に対する監督や、信託契約代理店の業務・監督などを定めた法律です。
  • 信託銀行等の信託兼営金融機関についても兼営法により信託業法が準用・適用されます。
  • 信託業法も信託法と同様に1922年(大正11年)に制定されましたが、その後、およそ80年間見直しが行われなかったために、兼営法により信託業務の認可を受けた信託銀行をはじめとする信託兼営金融機関以外の事業会社による信託業務の取扱いや信託で受託できる財産の種類の撤廃のニーズが高まりました。
    そのため、2004年(平成16年)に抜本的に改正され、信託会社へ信託業の担い手が拡大され、また、信託財産の制限が撤廃されました。
  • 2006年(平成18年)には金融商品取引法の制定に伴い、信託業法も改正され、投資性の強い信託契約(特定信託契約)に対して金融商品取引法が適用されることとなり、より一層の投資家保護が図られることとなりました。

金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)

  • 銀行などの金融機関が信託業務を行うための兼営の認可、業務、監督などを定めた法律です。(兼営法と呼ばれます)
  • また、兼営法により認可を得て信託業務を行う金融機関は信託銀行や信託兼営金融機関といいます。
  • 兼営法には、信託業法の準用規定が定められているので、信託銀行などの信託兼営金融機関にも信託業法の一部が準用して適用されます。
  • 兼営法では、信託業に加えて、証券代行業務、遺言関連業務および不動産業務などの通称、併営業務の取扱いが規定されています。

銀行法

  • 銀行の免許や業務、監督などを定めた法律です。信託銀行も銀行ですので、この法律に基づいて設立され、金融機関の信託業務の兼営等に関する法律に基づき信託業務の兼営の認可を得て、信託業を営んでいます。

金融商品取引法(金商法)

  • 金融商品について横断的な制度の整備を図ること等により、利用者保護ルールの徹底と利用者利便の向上、市場機能の確保等を図ることを目的に、平成18年に証券取引法を全面改正する形で制定された法律です。略称として金商法と呼ばれます。
  • 具体的には、株式、公社債、信託受益権などの有価証券の発行や売買などに関して、情報開示、金融商品を販売等する際の規制、不公正取引に対する規制などのルールを定めています。
  • 仕組み預金や外貨預金、変額年金保険など投資性のある金融商品には、金融商品取引法に規定されている販売・勧誘ルールが適用されますが、信託銀行等が投資信託や金銭信託のうち元本補てん契約のない信託を取り扱う際にも同様に適用されることになります。


金融商品取引法と信託の関係に関しては以下のページで詳しくご紹介しておりますのでご覧ください。

金融商品取引法と信託