公益信託
公益活動を行いたいが、何をしたら良いか分からない。自分の資産を社会のために活かしたい。
このようにお考えの場合、「公益信託」を利用すれば、信託銀行等があなたに代わり、公益活動を運営いたします。
これまでに、学生への奨学金支給、自然科学分野での研究費助成、社会福祉、自然環境の保全などを目的とした多くの公益信託が設定されています。
- ご自身の財産を広く社会に役立てたい方
- 社会貢献活動に関心がある方
概要
あなたの思いが社会に活きます
公益信託とは
公益信託とは、個人や法人が、金銭等の財産を、学術、技芸、慈善、祭祀等の公益目的のために信託銀行等に預け、信託銀行等は、定められた目的に従って、その財産を管理・運用し、公益的な活動を行う制度です。
公益法人と比較して効率的・弾力的な運営が可能
公益信託は、公益法人、特に公益財団法人と同様の機能を持っていますが、公益法人と比較して、次のような利点があります。
- 公益法人は、そもそも法人の設立行為・手続が必要になりますが、公益信託の場合は、信託銀行等が主務官庁へ許可申請等を行うので、財産を社会のために役立てたい方(出捐者)にとっては、より簡便に公益活動を始めることができます。
- 公益法人は、一般に、事務所・職員等を置く必要があることから、一定の基本財産や事務所費用、人件費・物件費が必要となりますが、公益信託は、信託銀行等がその運営を行うので、専用の事務所や職員を置く必要がないことから、公益法人ほどの財産規模を必要とせずに、効率的な運営ができます。
- 信託した財産を取り崩して公益目的のために短期間での助成等を行うことができるため、弾力的な運営ができます。
- 公益活動中の助成金の交付や主務官庁等への報告、公益活動終了時の手続も、すべて信託銀行等が行います。
信託銀行等が法律に基づいて目的に沿った事務を確実に実行
信託銀行等は、法律に基づき、善管注意義務、忠実義務、分別管理義務など、さまざまな義務を負っています。また、適切な信託事務が行われるよう主務官庁の監督も受けます。
例えば、もし、信託銀行等が義務に違反して財産に損失を与えた場合には、その損失のてん補や原状回復の責任も定められています。
このように厳しい義務を負っている信託銀行等が設立から終了まで運営を行うので、出捐者は安心して設定することができます。
名前や会社名が顕彰されます
公益信託の名称には、一般に財産を出捐した方の氏名や会社名を入れることができますので、末永く、そのお志が顕彰されます。(例えば、「信託太郎」という人が奨学金支給目的の公益信託を設定した場合、公益信託の名称として「公益信託 信託太郎奨学育英基金」などとつけることができます。
公益信託の中には税制上の優遇措置を受けることができるものもがあります
一定の要件を満たした公益信託は、税制上、「特定公益信託」あるいは「認定特定公益信託」とされ、寄附金控除等の適用を受けることができます。
詳しくは、「よくあるご質問」をご覧ください。
仕組み
主な関係者
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- 委託者
- 出捐者(資金提供者)
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- 助成先
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- 主務官庁
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- 信託管理人
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- 運営委員会等
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- 受託者
- 信託銀行等
1寄附を行う出捐者[委託者]は打合せ(コンサルテーション)を行います。
2信託銀行等[受託者]は公益信託の引受許可申請を行います。
3出捐者[委託者]は、信託銀行等[受託者]に財産を信託します。
4主務官庁は、信託銀行等[受託者]に対して必要な処分を命ずることができます。
5信託管理人は、重要な事項について承認を与えます。
6運営委員会等は、助言・勧告を行います。
7信託銀行等[受託者]は、助成先への助成金の交付を行います。
8信託銀行等[受託者]は、信託財産の状況を報告します。
9信託銀行等[受託者]は、「事業状況報告書」等を主務官庁に提出します。
よくあるご質問
税制上の優遇措置が設けられている特定公益信託および認定特定公益信託の場合は、法令により、信託できる財産は金銭に限られています。
その他の公益信託については、信託できる財産は法令上、特に制限はありませんが、「公益信託の引受け許可審査基準等について(平成6年9月13日公益法人等指導監督連絡会議決定)」によって、次のとおりとされています。
公益信託は、その目的を達成するため、授益行為を継続するのに必要な確固とした財産的基礎を有していなければならない。従って、少なくとも次の事項に適合していなければならない。
ア 引受け当初の信託財産の運用によって生ずる収入により、その目的の達成に必要な授益行為が遂行できる見込みであること。ただし、信託財産の取崩しを内容とする公益信託にあっては、信託財産により、その目的の達成に必要な授益行為が存続期間を通して遂行できる見込みであること。
イ 価値の不安定な財産、客観的な評価が困難な財産又は過大な負担付財産が、上記「ア」の財産の中の相当部分を占めていないこと。
奨学金支給
勉学の意思を持ちながら、経済的理由により修学が困難な国内の学生に対して奨学金の支給を行うものです。
学術研究などへの助成
医学、科学技術等の自然科学の研究や人文科学等の研究に対する助成、国内外の学術交流の費用の助成を行うものです。
各種の教育振興活動への助成
学校教育、青少年等を対象とするスポーツ・文化・芸術活動等社会教育の振興活動に対する助成を行うものです。
国際協力・国際交流推進
海外の経済、技術協力の推進活動に対する助成、教育、学術、文化等の国際交流活動に対する助成を行うものです。
社会福祉事業への助成
社会福祉の向上のために活動する個人、団体、福祉施設に対して助成を行うものです。
芸術・文化振興
音楽、美術、工芸等の芸術活動、文化の調査・研究、芸術の普及向上活動、文化財の保存および活用等、芸術・文化振興活動に対する助成を行うものです。
街づくりなどへの助成
地方公共団体、土地区画整理組合などから信託された財産をもとに、街づくりや都市環境の整備・保全活動に対して助成を行うものです。
自然教育の保全などへの助成
国内外の優れた自然環境の保全、絶滅危惧種の保護、国土の緑化事業の推進などのために活動している団体・個人に対して助成を行うものです。
「主務官庁」
公益事業を管轄する行政官庁を指します。例えば、学生への奨学金の給付を目的とした公益信託でも、対象となる学生が全国にわたるときは文部科学省、県内にわたるときは県の教育委員会が主務官庁となります。また、同じ文部科学省でも、対象が大学生であるときと高校生であるときとでは、担当する部局が異なります。
「運営委員会」
目的に応じた各分野の学識経験者等によって構成され、信託銀行等[受託者]の諮問により、事業執行の重要事項について助言・勧告を行うほか、助成先の推薦を行います。つまり、公益目的の円滑な遂行のために受託者の補助的な機関として設置されています。
特定公益信託とは、以下の一定の要件を満たし、主務大臣の証明を受けた公益信託を言います。
- 信託終了の時における信託財産がその委託者に帰属しないこと
- 信託契約は、合意による終了ができないものであること
- 出捐する財産が金銭に限られていること 等
認定特定公益信託とは、特定公益信託のうち、以下の要件を満たしていることについて主務大臣の認定を受けた信託をいいます。特定公益信託とは異なり、出捐者に対して税法上の優遇措置があります(所得控除、損金算入)。なお、設定の有効期間は5年とされており、信託銀行等は5年ごとに認定の申請をしなければなりません。
- 科学技術(自然科学に係るものに限る)に関する試験研究を行う者に対する助成金の支給
- 人文科学の諸領域について優れた研究を行う者に対する助成金の支給
- 学校(学校教育法1条)における教育に対する助成
- 学生または生徒に対する学士の支給または貸与
- 芸術の普及向上に関する業務
- 文化財(文化財保護法2条1項)の保存および活用に関する業務(助成金の支給に限る)を行うこと
- 開発途上にある海外の地域に対する経済協力(技術協力を含む)に資する資金の贈与
- 自然環境の保全のため野生動植物の保護繁殖に関する業務を行うことを主たる目的とする法人で、当該業務に関し国または地方公共団体の委託を受けているもの(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む)に対する助成金の支給
- すぐれた自然環境の保全のため、その自然環境の保存および活用に関する業務(助成金の支給に限る)を行うこと
- 国土の緑化事業の推進(助成金の支給に限る)
- 社会福祉を目的とする事業に対する助成
- 1.~11.の2以上を合わせてその目的とするもの
公益事業の遂行にかかる費用には、例えば以下のようなものがあります。なお、費用は全て信託財産から支払われます。
- 運営委員会等および信託管理人の経費
- 広告費、渉外費用
- 租税公課、送金手数料
- 個別パンフレット作製費、個別年次報告書作成費等の経費
- その他信託管理人の承認を得た費用
また、事務負担の内容をふまえて、あらかじめ契約書に定められた信託報酬が信託財産から支払われます。
信託銀行等によって取扱いが異なる可能性がありますので、詳細については直接ご確認ください。